社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~⑧
2023/06/15
2)
【取締役の報酬額を期中改定】
取締役会議事録
第○号議案 取締役の報酬額改定の件
議長は、改定理由そして、取締役報酬の月額を以下のとおり改定したい旨を諮ったところ、出席取締役全員の賛成を得たので原案どおり承認可決した。
氏名
役職
改定前
改定後
※上記改定理由 → 記載では足りない → エビデンスが必要★1
〈記載例〉
○株主との関係
「別紙資料に基づき、会社の業績が当期に入ってから著しく悪化し、第2四半期決算で○○億円の純損失を計上した。また、(上場会社)年度決算においても○○億円の当期純損失となる見込みであることを説明した。ついで、株主に対し役員としての経営上の責任を明確に示す必要がある旨を述べ、ついては、取締役の報酬額を減額したい旨を述べた。」★2
○銀行との関係
「業績の悪化に伴い、取引銀行○○銀行と借入金返済のリスケジュールについて交渉したところ、役員給与の減額を条件として、リスケジュールの承諾を得られる見込みであることを説明し、取締役の報酬額を減額したい旨を述べた。」
○地位の変更
「取締役○○○○は、第○号議案の承認により令和○○年○月○日付で常務取締役に選任されたことから、報酬額を増額したい旨を述べた。」
○病気 → FAQも参照のこと
「取締役○○○○は、病気のため2か月間の入院が必要となり、当初予定されていた職務の執行が一部できない状態になったため、その期間中の報酬額を減額したい旨を述べた。」
★1
・改定理由はFAQ等から抜粋します。
・事業計画書、将来キャッシュフロー計算書等のエビデンスは必須です。
・取締役の同意書が別途必要になります。
・全員分を記載します。
★2
FAQでは、
「上記①については、株主が不特定多数の者からなる法人であれば、業績等の悪化が直ち に役員の評価に影響を与えるのが一般的であると思われますので、通常はこのような法人が業績等の悪化に対応して行う減額改定がこれに該当するものと考えられます。 一方、同族会社のように株主が少数の者で占められ、かつ、役員の一部の者が株主である場合や株主と役員が親族関係にあるような会社についても、上記①に該当するケースがないわけではありませんが、そのような場合には、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的かつ特別の事情を具体的に説明できるようにしておく必要があることに留意してください。」とあるため、同族特殊関係法人では事実上「〇株主との関係」を適用することは非常に困難です。
ロ 実質基準
下記を総合勘案します。
〇「その役員の職務の内容」……社長以下職制上の地位、勤務状況、経営に関する関与状況、その役員の職歴、経験、個人的能力等の差も影響
〇「その内国法人の収益」……売上高、伸び率、利益の状況
これに関して最も代表的な事案として下記があります。役員給与の「不相当に高額」という基準について極めて慎重に取り扱いたいとの希望があれば、下記のように売上や利益比率連動を採用するのもひとつの手段です。
〇名古屋地裁平成6年(行ウ)第13号法人税更正処分等取消請求事件(一部取消し)(確定)(TAINSコードZ215-7696)(判示事項一部抜粋)
(4)法人税法施行令69条(過大な役員報酬の額)に規定する適正報酬額の意義
(5)原告会社の代表者に対する適正報酬額は、類似法人の平均報酬額を基準として原告会社と類似法人との売上金額等の差異を修正した額であり、当該金額を超える額は不相当な額であるとの課税庁の主張が、役員報酬は各法人においてその具体的事情に応じ個別的に定めているものであり、法人間で報酬額に多少の差異があるのが通常であるから、課税庁主張の適正報酬額を超える額が常に不相当な額であるということはできないとして排斥された事例
(6)平成3年3月期の売上金額を1億円と見込むことができたため、平成2年5月開催の株主総会において本件役員報酬の額を決定したのであり、本件役員報酬の額は右決定の経緯から過大ではないとの原告会社の主張が、適正報酬額は客観的相当額であるから、仮に原告が主張するような状況にあったとしても、適正報酬額は実際の平成3年3月期の売上金額6,810万円に基づいて認定すべきであるし、また、適正報酬額は売上金額のみによって決まるものでないとして排斥された事例
(7)中略
(8)原告会社の代表者に対する役員報酬額は、原告会社の売上金額の対前年度増加比率及び使用人給与総額は類似法人の平均値に近似しているが、個人換算所得は類似法人1.4倍、使用人給与最高額は同1.3倍、役員報酬の額は類似法人の平均値の2.53倍であり、類似法人最高額の2倍であるから、類似法人と比較して著しく高額であるとされた事例
(9)原告会社の代表者に対する適正役員報酬額は、原告会社の収益の伸び率及び類似法人における役員報酬の支給状況等に照らして、前年度報酬額の1.53倍(売上金額の伸び率)を超えることはないとされた事例
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